2012年6月5日火曜日

READY!

 
 
ついに「ヤツ」と対峙したのです。
 
伊勢湾岸道の「湾岸長島」出口付近、
高速沿いにぬーっと立っている憎いヤツ。
それが、東京~兵庫県を車で往復するたびに、
必ず僕を威圧するのです。
「お前はビビリやから、俺には勝たれへんやろ」
まあ、三重県なので、
「お前は臆病なもんで、ワシには勝てんわさ」
みたいな、挑発的なその姿。
 
そうです。僕はビビリです。
おまけに高所恐怖症です。
ふちのない、せり上がったステージで踊ったり、
高所の空中をワイヤーで吊られながら歌う「嵐」を見て、
今後何があってもうっかり「嵐」に入らないようにしよう、と決意したくらい、
高いところが嫌いです。
 
だのに、なぜ。
人生待ったなしの僕に、もう怖いものなんかないわ!という
やけっぱちな気持ちがそうさせたのでしょうか?
先日、ふと巡ってきた家族サービスのチャンス。
ふと気がついたら僕は、友人家族と一緒に、
ナガシマスパーランドに来ていたのでした。
 
日本全国のジェットコースターマニアの皆様なら当然ご存知の、
スリル満点ライドで有名な、ナガシマスパーランドです。
まずは、世界最大級の木製コースター「ホワイトサイクロン」。
許してくださいと言いたくなる強烈な横Gに耐えるのも、
手術前だったら、きっと難しかったことでしょう。
 
 
そして、日本一の高さ(97メートル)と最大落差(93、5メートル)、
世界一の全長2479メートルという距離を誇る、「スチールドラゴン」。
最高時速153キロの世界で、3分半ほど叫びっ放しというシロモノです。
 
「ホワイトサイクロン」が、コースター好きを満足させる、
質量ともに完成されたフルコースだとしたら、
「スチールドラゴン」は獰猛な脅威。
食事で言ったら野生の骨付き肉の塊のまるかじりです。
僕は生まれて初めて、遊んでいる時に命の危険を感じました。
 
 
スチールドラゴンの上昇中に、地上に向かって手を振る。
恐れるものなど何ひとつない、最後の幸せなひととき。



  










スパーランドの安全点検は親切丁寧で、とてもありがたいのです。
だから、乗り物は安全なのです。
安全なはずです。
安全に違いありません。
しかし、本能は叫びます。アカン、これはアカン、と。
おかげで家族サービスのはずの行楽は、
僕の精神修行の場となってしまいました。
 
さて、気を失いそうなほどの眠さに耐える帰り道。
運転手の命綱は、時々口に放り込むミントの粒だけです。
ヨメがそれをパッケージごとシートの隙間に落としてしまい、
しかも「隙間に手が入らなくて取れない」と言われた瞬間の
やるせなさ、切なさ、怒り。
感情を爆発させることなく「しゃあないよ」と言えた僕は、大人でした。
精神修行の効果が出ていました。

心の開幕準備、OKです。