久しぶりに、ひーさんと一緒に夕飯。
僕らは、同期でプロに入りました。
リーグは違っても、同い年同士で、誕生日も一日違いの同級生。
厳しく華やかな舞台で、たくさんの名場面を作り上げてきた彼と、引退した僕。立場が変わった今は、取材される側と、する側。解説される側と、する側です。
会えばいつもと変わらない。けれど、球場では、もはや遠い人です。
先日、初めてその距離感で仕事をした時、
僕はバッターボックスに立った彼の姿に気持ちが高ぶって、
高ぶりすぎて、ついに解説者として、まともにコメントすることができず終わりました。
「きっと複雑な気持ちでしょうねえ」
それが、僕が言ったすべて。
本当は、もっともっともっと、放送時間なんか無視してしゃべり倒したいくらい、
桧山選手に関して言いたいことが山ほどあります。彼の選手としての、人間としての大きさと凄さを、
放送席から引きずり出されるまで伝え倒したいものです。
でも、感情がうわーっと高ぶって、
胸がいっぱいになって、
大歓声の中でプレーする彼がうらやましくて、
そして、誇らしくて、
結果、言えたのは、それだけ。
同い年の僕が引退し、目標であり支えだった金本選手が引退を決め、
なんだか自動的に、自分もその流れに乗らなくちゃいけないような気持ちになる、させられる、そんな年齢です。
ちらりとでも彼の頭の中に、そんな考えが浮かんでるんちゃうか、そう思っただけで、
もう、いても立ってもいられません。
アカンアカン、その流れに乗ったらアカン。
やめるのなんて、いつでもできんねん。はい、今日やめます!って、言えば終わりやねん。
だから、まだまだ言わんといてな。
今や僕にとって、ひーさんは最後の砦です。希望の星です。
自分が果たせなかったことや、やり残した夢を、彼に託しているのです。
知識も経験もある、まだまだやれるベテランが、若返り、の名の下に
来し方行く末を考えさせられるのは、もしかしたら他の仕事だって同じかもしれません。けれど、それだけの時間をかけて培ってきたものは、組織にとっての財産のはずです。
ニコニコと僕の言い分に耳を傾ける彼には、
勝負をしている男としての気力と気迫がみなぎっています。それで、ああ、まだバンバン行けるで、と安心させてくれるのが嬉しい。
等身大で、地に足のついた男。
僕の大好きな野球選手です。
昔、同じマンションに住んでいた頃は、ヨメさん同士がテレビを二台並べて、
それぞれの試合経過を見ながら4人分の食事を作って待っていたこともありました。これからは僕がテレビの前にかじりついて、彼の姿を追い続けます。
ご飯は作りません。