ようやく厳しい寒さも緩み、家の近所、夙川(しゅくがわ)という桜の名所は、
今、まさに目を見張るような美しさです。
僕の肩の調子も、気温とともにどんどん上がってきました。
もう、「焦らず、飛ばさず、押さえ気味に」なんていう我慢はしていません。
行け行けどんどん、です。
この行く道の先に何が待っているかはわかりませんが、
とりあえず、今日も、明日も、ひたすらトレーニングをするのです。
使わなければ筋力も、感覚も、すべてが錆びてしまいますから。
だから、頭も、ということで、ここしばらく、英語のレッスンに通っています。
もともと、「錆びてしまうほど」のレベルでもないのですが、
やっぱり使わない限り、どんどん忘れてしまう。それがつらい。
ということで、渡米時に大変お世話になった、同時通訳者の橋本光穂先生の門下に
再び弟子入りしました。
教わる相手によって、何かを好きにも嫌いにもなる。それってすごい。 |
やらされる勉強は大嫌いだし、今でも試験の夢を見て苦しむほどの僕ですが、
橋本先生の授業はあまりに楽しく興味深く、時間はあっという間に経ってしまいます。
日本の英語教育、とりわけ受験などでは、たくさんの「記憶すること」が求められます。
なぜ、その前置詞が使われるのか、という理由は、多くの場合さて置いて、
丸ごと覚えこんでいくほうにウエイトを置いている気がします。
きっとそこまで、噛み砕いている時間もないし、覚えなければいけないことが
あまりに多すぎるのかもしれません。
そんな環境で僕も育ちました。
だから大人になった今頃になって、たったひとつの前置詞の持つ意味合いを、
1時間以上かけて噛み砕き、図解して、絵で描いて、
解説してくださる先生の授業のおかげで、
「あーーー!だからなんや!」と納得することの連続です。
もし先生にもっと早く出会っていれば、
僕は今頃英語の達人だったかもしれません。
いえ、少なくとも、英語が大好きでたまらなかったことでしょう。
春爛漫。神戸の坂の町にある先生のお宅へ、ヨメと一緒に通います。
早朝に家を出て、途中子供を学校で落とし、それから先生の町へ。
あわただしくて朝食を食べ損ねた日は、
道中のコンビニで間に合わせることもあります。
僕はもともと朝、あまり食欲が沸かないほうで、
小さなマフィンとコーヒー、それで十分。しかしヨメは、飢餓状態で目が覚めてしまうほど、朝、がっつり食べたい女。
一日のうち、朝が一番おなかがすいているのだと言います。
前夜どんな時間まで飲んでいようとも、
朝ごはんを欠かす、という選択はない。絶対ない。
だから、朝食を外で済ませる時、「どこで何を食べるか」を決めるのは、
いつでも戦いです。
小さなペストリーにコーヒー。ヨメにとってそれは「食事」ではなく
「おやつ」です。僕が「パンにせえへん?」言うと、悲しそうに首を振ります。
だから昨日も、選択権をゲットした彼女が行きたがったのは「すき家」。
「朝から牛丼?俺食われへんわー」
「大丈夫。ミニサイズもあるから」
どうやら一人でふらっと入ることもあるらしく、妙にメニューに精通しているヨメ。
僕も牛丼は大好きですが、朝8時台にはきついでー。
とはいえ、見たらやっぱりおいしそうなので、
「牛丼、の・・・普通サイズを、味噌汁つけてお願いします」
「ハイ、牛丼ですね」
さあ、ヨメの番です。
「豚のしょうが焼き定食をお願いします」
「ハイ、豚のしょうが焼きですね」
(重いやろ?)
「それと・・・」
(それと?)
「牛丼ひとつお願いします」
(はい?)
聞き間違いであってほしいとどれだけ願ったことでしょう。
僕の前に、ちんまり牛丼と味噌汁。
そして、ヨメの前には、大きなしょうが焼き定食と、牛丼。
定食ですから、ご飯もついているわけです。そしてその隣に牛丼。
ホンマかいなー。
(僕がどれだけ身体を鍛えても、この人の生命力にだけは、絶対敵わない)
すべてが新しく、希望にあふれる春の朝に、
何、このごっつい敗北感。
P.S.
以前もここで書きましたが、糸井重里さんとの対談が、
明日から「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載されます。
詳しくはほぼ日のHPにてご覧ください。