2012年4月11日水曜日

勝ち負けで言うところの、負け

 
 
ようやく厳しい寒さも緩み、家の近所、夙川(しゅくがわ)という桜の名所は、
今、まさに目を見張るような美しさです。
僕の肩の調子も、気温とともにどんどん上がってきました。
もう、「焦らず、飛ばさず、押さえ気味に」なんていう我慢はしていません。
行け行けどんどん、です。

この行く道の先に何が待っているかはわかりませんが、
とりあえず、今日も、明日も、ひたすらトレーニングをするのです。
使わなければ筋力も、感覚も、すべてが錆びてしまいますから。

だから、頭も、ということで、ここしばらく、英語のレッスンに通っています。
もともと、「錆びてしまうほど」のレベルでもないのですが、
やっぱり使わない限り、どんどん忘れてしまう。それがつらい。
ということで、渡米時に大変お世話になった、同時通訳者の橋本光穂先生の門下に
再び弟子入りしました。
 
教わる相手によって、何かを好きにも嫌いにもなる。それってすごい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
やらされる勉強は大嫌いだし、今でも試験の夢を見て苦しむほどの僕ですが、
橋本先生の授業はあまりに楽しく興味深く、時間はあっという間に経ってしまいます。

日本の英語教育、とりわけ受験などでは、たくさんの「記憶すること」が求められます。
なぜ、その前置詞が使われるのか、という理由は、多くの場合さて置いて、
丸ごと覚えこんでいくほうにウエイトを置いている気がします。
きっとそこまで、噛み砕いている時間もないし、覚えなければいけないことが
あまりに多すぎるのかもしれません。

そんな環境で僕も育ちました。
だから大人になった今頃になって、たったひとつの前置詞の持つ意味合いを、
1時間以上かけて噛み砕き、図解して、絵で描いて、
解説してくださる先生の授業のおかげで、
「あーーー!だからなんや!」と納得することの連続です。
もし先生にもっと早く出会っていれば、
僕は今頃英語の達人だったかもしれません。
いえ、少なくとも、英語が大好きでたまらなかったことでしょう。

春爛漫。神戸の坂の町にある先生のお宅へ、ヨメと一緒に通います。
早朝に家を出て、途中子供を学校で落とし、それから先生の町へ。
あわただしくて朝食を食べ損ねた日は、
道中のコンビニで間に合わせることもあります。
僕はもともと朝、あまり食欲が沸かないほうで、
小さなマフィンとコーヒー、それで十分。

しかしヨメは、飢餓状態で目が覚めてしまうほど、朝、がっつり食べたい女。
一日のうち、朝が一番おなかがすいているのだと言います。
前夜どんな時間まで飲んでいようとも、
朝ごはんを欠かす、という選択はない。絶対ない。
だから、朝食を外で済ませる時、「どこで何を食べるか」を決めるのは、
いつでも戦いです。

小さなペストリーにコーヒー。ヨメにとってそれは「食事」ではなく
「おやつ」です。僕が「パンにせえへん?」言うと、悲しそうに首を振ります。
だから昨日も、選択権をゲットした彼女が行きたがったのは「すき家」。
「朝から牛丼?俺食われへんわー」
「大丈夫。ミニサイズもあるから」
どうやら一人でふらっと入ることもあるらしく、妙にメニューに精通しているヨメ。
僕も牛丼は大好きですが、朝8時台にはきついでー。

とはいえ、見たらやっぱりおいしそうなので、
「牛丼、の・・・普通サイズを、味噌汁つけてお願いします」
「ハイ、牛丼ですね」

さあ、ヨメの番です。
「豚のしょうが焼き定食をお願いします」
「ハイ、豚のしょうが焼きですね」
 
(重いやろ?)

「それと・・・」

(それと?)

「牛丼ひとつお願いします」

(はい?)

聞き間違いであってほしいとどれだけ願ったことでしょう。
僕の前に、ちんまり牛丼と味噌汁。
そして、ヨメの前には、大きなしょうが焼き定食と、牛丼。
定食ですから、ご飯もついているわけです。そしてその隣に牛丼。
ホンマかいなー。

(僕がどれだけ身体を鍛えても、この人の生命力にだけは、絶対敵わない)

すべてが新しく、希望にあふれる春の朝に、
何、このごっつい敗北感。
 
 
 
P.S.
以前もここで書きましたが、糸井重里さんとの対談が、
明日から「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載されます。
詳しくはほぼ日のHPにてご覧ください。