2012年11月26日月曜日

この2ヶ月

長いこと、本当に長いことブログをほったらかしにして、何をしとったんや、と、
もし一人でもお怒りならば。

それはそれで嬉しい。気にしてくださってありがとうございます。
しかしながら申し訳ない。

新たな世界に飛び込んで早くも2ヶ月。毎日が刺激と疲労の連続で、
家に帰ったらその日の反省をして、勉強をして、ベッドにもぐりこむのがやっと。
そもそも、出張ばかりで、家にもそんなに帰っていません。
「野球のほうがラクやった~」なんて、たわむれで叫んでみる。
もちろん、野球が楽なわけ、ないのです。でも、慣れない事はつらいのです。
そんなこんなで、このブログは放置されていたのでした。

この2ヵ月。
僕は、たくさんのテレビ・ラジオ番組に呼んで頂きました。
野球人として、野球解説をする、ばかりでなく、他のスポーツについても語ってしまったり、
人生を振り返ったり、時勢について語ったり。
こんなにもたくさん、お仕事をいただいてええんやろかと
有頂天になっていたら、ヨメが言うのです。
「今は引退したてだし、もの珍しいし。でも、野球選手は毎年引退するから、
目新しくなくなった瞬間からは、実力勝負よね」
この人は、いつでも現実しか見ていないのです。夢物語を語らないのです。
しかも放送業界にいたくせに、新人の僕に指導しないのです。
「注意されればされるほど、のびのびしゃべるのが怖くなるから」と、放任する気なのです。
ぎりぎり締め付けられたほうがよかった。
「妙にテクニックに走るより、自分らしく素直が一番」だなんて、
要は自分でどうにかしろと。

田口壮、割とピンチです。
どこに行っても、
「奥さんアナウンサーだったから、いい先生がいてよかったですね」と言われるのですが、
先生は放任主義で、酒飲んで鼻歌歌ってます。注意?しません。
誰かどうにかしてください。

この二ヶ月で特筆すべきはふたつ。まずは、MBSラジオでメインパーソナリティーを
させていただいていることです。
「WITH 夜はラジオと決めてます」という番組の、火曜日のパーソナリティー。
夕方6時から10時まで、4時間出ずっぱりのしゃべりっぱなし。
生放送は恐ろしく、緊張の連続です。
「こういうことは言ってはいけない」「言うべきではない」と頭にインプットすると、
インプットしてあるがゆえに言いたくなります。
気の利いた言葉が出てきません。
MBSはチャレンジャーです。
しかし、この番組が、僕にどれだけの勉強と経験をさせてくれていることか。
来年三月までの番組ですが、毎週毎週、どきどきしながら楽しませていただいています。
そして、聴いてくださっている方たちが、その4時間を少しでも楽しんでくださっていることを
心から願ってやみません。

さて、特筆の、二つ目。
生まれて初めて、フルマラソンを走りました。
本当は「11月25日、神戸マラソン走ります!」とブログで宣言したかったのですが、
言わなアカンなーと思っているうちに、昨日終わってしまいました。
ものすごい時間をかけてゴールしました。
身体中がボロッボロになりました。
一度も止まらなかったけれど、走っている間中、「なんでこんなに苦しいことしてんねん俺~」と
激しく後悔していました。

僕がもとアスリートだからと、引退してさほどの時間も経っていないからと、
ちゃらっと簡単に走った、なんて想像してはいけません。
髪を振り乱し、併走のカメラマンに「話しかけんといてくれー!」と当たり、
顔をゆがめ、
「こんなこと望んでするやつはあほやーーー」と思っていた私。
ホンマにホンマにホンマに、苦しいばかりの42.195キロでした。
二度と走らん。というか、走れんわ!!!


ゴール直後にインタビューを受ける。サービス精神など皆無




















一度も、歩かなかった。それだけが、目標やった。
万感あふれる神戸の町を、とにかくたくさんのことを考えながら、
歩くより遅いスピードで「走った」。
つらい。きつい。帰りたい。やめたい。
なんで走るん?なんでこんなことにエントリーするん?

だいたい家に帰るまで、全身動かへんし、アドレナリンが出まくって、
妙に早口やし、ここには書けないような恐ろしいことが、いろいろ身体に起こったし。
かくもかくも、フルマラソンとは、心と身体を蝕むのです。それほど、恐ろしい競技なのです。
けれど人は、ゴールを目指すのです。

だからこそ。
僕は、ゴールしたすべての人を尊敬します。名前も知らない、話をしたこともない、
すべてのランナーたち。
僕をたったかたーっと、笑顔で抜かしていったおばちゃんたち。
途中で歩いて、歩いて、でも、とにかく前へ前へとじわじわ進んでいたおっちゃんたち。
全部全部、尊敬します。泣けてしまいます。なんで?なんでそんなに苦しいことを
わざわざ望むん?僕にはまだその答えがみつかりません。
けれど。
あの距離を、走り終えた、往き終えた、という、心と身体。そのすべてを尊敬します。
こんな気持ちになるなんて、想像してもいませんでした。そして恐ろしいことに、
答えを知りたくて、また、暴挙に及んでしまいそうな自分がいます。

この模様は、12月1日、ABCテレビ、朝日放送で16時半に特集されます。
僕の恥ずかしい姿と、そのほかの皆さんの、全身全霊の生き様を、
どうかしっかりとご覧ください。

レース後のインタビュー。
余裕のない僕は、ただゴールした、ということだけに興奮し、
己の結果のみに囚われていました。
でも今、一日経ってから思うのです。
野球選手として21年間。
メジャーに行った。ワールドシリーズ優勝。
たくさんたくさん、ほめていただきました。
僕は僕の世界で、できることのすべてを、一番上を目指しながら
やってきたつもりでした。
けれど、あまりにも知らないゴールは他にもあって、
そこに吸い込まれた人たちへの憧れと尊敬は、
時間が経つごとに、強く鮮やかになっていくのです。

すごい経験をさせていただいています。
世の中は、球場よりもずっと広いのです。