2013年3月7日木曜日

すっかり筆不精

大変長らくご無沙汰しております。いつも長らくご無沙汰してすみません。
タブレットを持ち歩いている割には、データを見るばかりの資料と化しており、
ホームページもブログも、果ては友人たちからのメールもほったらかしなのです。
「新年会をやろう」とあちこちで約束していたのに、すでに旧暦の正月も過ぎているのです。

これまでの人生で、最速の時の流れ。
その流れにあっぷあっぷと溺れかけながら、やっと家で、コーヒーを傍らに置いて、
皆様にご挨拶できる時がやってきました。

お元気ですか?僕は、へろへろです。

体力でもなく、気力でもない。今まで使った事のない脳の一部が、
連日フル稼働でへろへろなのです。放送業界は、大学卒業以来
野球しかやってこなかった僕にとって、過酷な戦場です。

人にものを伝える、という仕事。今までのように、身体と技術を鍛えて、
パフォーマンスをお見せする「伝え方」とは明らかに違う。
どうやったら、よりわかりやすく伝えることができるんやろう?
そのためには、まず、言葉を駆使しなければならないのです。
小難しい言葉を使って「デキル男」を演出するのではなく、誰もが、一回聞いたら「ああ」と
納得してもらえる言葉を持っていなければなりません。発声、発音、滑舌、なんかも
求められるのです。準備万端、などということは決して起こらず、
勉強しても勉強しても、次の課題はやってきます。いまだに試験の夢でうなされるというのに、
この歳になって、終わらない期末試験の到来です。

しかも、「これでどやねん!」と下調べをしても、練習しても、
生放送の本番では、頭がぱんぱんになってしまって、あわあわのままに終了するのでした。

家に帰ると、もとプロのヨメが、あいまいな笑顔で迎えてくれます。
彼女は何も言わないのです。
「あなたのいいところや味がなくなってしまうのが怖いから」だそうです。
アドバイスを求めれば答えてくれますが、指導はしてくれません。

知識と、言葉と、機転と、あとは度胸?
あらためて、テレビやラジオのお仕事を生業としていらっしゃる方々に、
「今までぼーっと見ながら勝手なこと言っててスミマセン」と、お詫びしたい気分です。

その、くるしーい状況に、さらに試練は待ち受けていたのでした。
英語です。
今年からNHKさんにお世話になることが決まり、先日までメジャーの取材に
派遣していただいたのですが、インタビューは当然英語のみ。
僕は「MLB解説者」という立場で、今回の取材のメインは、日本人選手ではなく、むしろ
日本人以外の選手でした。行く先々で昔馴染みに遭遇しまくって、嬉しく、楽しく、懐かしく、
妙に居心地よく過ごしていたのですが、仕事で使うのはなんせ英語。
カメラの回っていないところで、手足を存分に振り回しながらするプライベートトークとは違います。
公共の電波で使用されるインタビューなのです。

僕の英語は、とりあえず、相手に理解してもらうことができます。
相手の言っていることは、ほぼわかります。
とはいえ、発音は見事なジャパングリッシュで、こればっかりはどうしようもないのです。
ましてそれが放送で使われるなんて。うちの子供が聞いたら、
パパの威厳は地に落ちるでしょう。

けれど。
自分のインタビューだから、自分の言葉で話がしたいのです。
自分の言葉を、ぶつけてみたいのです。
そして、相手の言葉を自分なりに受け止めて、キャッチボールをしてみたいのです。
それがきっと、僕がインタビューする、という意義だ、と覚悟を決めました。

おそらく近々、テレビで妙に訛ったインタビューを耳にされるかもしれません。
笑っていただいてもいいのです。恥ずかしいのは承知の上です。
でもこれが、今の僕が皆さんにお届けできる、すべてです。
聞き苦しかったらすみません。
相手の選手は、ちゃんと英語をしゃべってますのでご安心ください。

あまりに多くの人々に再会したので、ここで名前を挙げ切れません。
あえて出せば、トニー。我が師、トニー・ラルーサにばったり会いました。
今は監督業から退き、動物愛護の仕事のかたわら、
コミッショナー事務局に顔を出しているのです。
首からかけている関係者用のパスも、天下御免の「コミッショナー」バージョンなので、
入れないところはひとつもないくらい威力があります。
「なんだ、お前のパスだったら、入れないところがあるじゃないか!」
優越感に満ちた笑顔で、僕のパスをいじりまわすトニー。
「ん?どう?なんかあったら言ってよ。なんせコミッショナー、だから。偉いんだから」

トニー・・・。どないしたんや・・・。
 
 
 
 
久しぶりに立つアメリカのフィールドは、懐かしいにおいがしました。
ここにおったんやなあ、という感慨。あちこちで声をかけ、迎えてくれる友達がいるという感謝。
たった8年だったけれど、いろいろな意味で僕を育ててくれたアメリカ野球を、
これからは少しでも楽しく、興味深く、見ていただけるよう、皆さんにお伝えしていきます。

そういえば先日、アメリカ野球にちなんだ本も上梓させていただきました。
「野球と余談とベースボール」というタイトルで、マイナビ新書から出ています。
日米の野球比較を、まだ記憶の新しいうちに、と、文化の違いなどを絡めて書いてみました。
興味のある方、ぜひ手にとっていただければ幸いです。

3月10日には神戸・三宮のジュンク堂で、そして、12日には大阪・梅田のジュンク堂で、
それぞれサイン会をさせていただくことも決まりました。
皆様にお会いできるのを楽しみにお待ちしております。

業務連絡みたいな久しぶりのメール。
いつも忍耐強く、このサイトを訪れてくださって本当にありがとうございます。
もうちょっとだけこの仕事に慣れたら、もっとひんぱんに書きますね。
いや、慣れてしまったらアカン。

ああ、ジレンマです。